我が家のガスメーターの管に蜂が営巣したらしい事を義父が見つけたのは7月29日の朝だった。それから家族みんなが騒ぎ出し、危険な蜂なら巣が大きくなる前に取らねばと様子を見にいったのだが、何のことはなくアシナガバチだった。
これが屋上菜園だったらそっとしておくのだが、割と人通りの多い狭い路地に面している所にあるので撤去せねば通行人に危険がある。
秋になればどんなに大きな巣でもほとんどが成虫になっているはずだが、夏のこの時期の直径10㎝近い蜂の巣である。中には十分な数の蜂の子を蓄えているはずだ。
巣を造る場所を間違えなければ全う出来た命を人間の都合で絶たれるのだから、ただ駆除するのは申しわけない。
その命はありがたく頂かなくてはいけない。
なるべく刺激しないようにして、撤去は週末まで待たせてもらった。
本来ならすぐ取ってしまうのであるが、
この暑さで毎日欠かさなかった晩酌を週末だけに限定したからだ。
(蜂の子をご飯のおかずにはきつい。)
いよいよ週末となり、撤去となった。
アシナガバチはスズメバチのように何段にも巣を作らないため、巣の周りが壁で囲まれていないシンプルな巣だから撤去はいたって簡単である。
それは攻撃してくる蜂の数を把握できるのと、周りにいる蜂だけ確実に遠ざければ簡単に蜂の巣を手に入れることができるからだ。
スズメバチの場合は働きバチの攻撃を受けずに(中にいる蜂の子を食べられる状態で)蜂の巣を手に入れるためには、出入り口を何回も何回も確認して、出入口に確実に煙幕を突っ込み中の蜂を仮死状態にする必要がある。
アシナガバチであれば、煙幕などは使わず、ハエ・カ用の殺虫スプレーを巣にかからぬように巣の周りに吹き、攻撃してきた蜂に向かって噴射する。噴射を繰り返すと蜂の数がばらける。その隙に巣をとってしまえばそれでおしまいである。
そうすれば、成虫の蜂をなるべく殺さずに済む。
せめてもの免罪符のつもりだ。
蜂の子は丁寧に巣を壊しながら取り外し、油を薄く塗ったフライパンで中まで火が通るようゆっくり乾煎りする。
子供の頃は近所の大人達から「生で食べる方がうまい!」と教えてもらったのだが、どうも甘味よりえぐみの強い感があって好きではない。
何よりプチっと口の中ではじけ、それからドロドロした液体が口の中に広がる感じが気持ち悪かったのを覚えている。
中まで火が通りカリカリ感が出てきたら軽く塩を振って出来上がり。
出来上がりは〈かっぱえびせん〉のような香ばしい味がするが、数時間置いておくと油が戻り、昆虫独特の粉臭さが気になるので出来たてを食べるのがベストである。
とはいえ、
子供の頃は蜂の子を普通に食べていたであろう昭和一桁生まれの義父も今は好んで食べようとしない。
今度巣を造るときは、屋上にお願いしたい。
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